2010年 03月 30日
Lovely, Still 映画「やさしい嘘と贈り物」 |
先週末、久しぶりに夫と映画を観に行きました。
最近、映画に関してはすっかり「カウチ族」になっていた私達ですが、今回はその日が
封切の、日本での公開が始まったばかりの映画だったので、はるばる銀座まで出かけ
ました。
どうしても観たかった映画は「やさしい嘘と贈り物」(原題 Lovely,Still )
アメリカの小さな町に、独りで暮らす老人ロバートの孤独な生活が、ある日突然、楽しく
ちょっぴり切ない生活に変ってしまう...それは、向かいに引っ越してきた美しい老婦人
メアリーと恋に落ちたから。
とても70代後半のカップルとは思えないほど、初々しい二人。
ロバートは、勤めているスーパーの若い店長マイクに、デートの場所について相談し、
メアリーは娘の心配をよそに、二人の仲を深めていく...
名優マーティン・ランドーとエレン・バースティンが、全く嫌味なく老人の恋を演じています。
(それにしても、御年77歳というエレン・バースティンの美しいこと)
雪の降る夜、ツリーのイルミネーションの輝く屋外で、二人でダンスをするシーンなど、
まるでファンタジー映画のような美しさでした。
毎朝、必ず薬を1錠飲んでいるロバート。
彼がその薬を飲むことを忘れた日、メアリーの姿が見えないことで不安になり、ロバートは
パニックに陥ります。
メアリーに電話をかけようとしても、電話番号を忘れてしまっている、気付いたら彼女の
ファミリーネームすら知らなかったという事実に、彼はますます混乱していきます。
戻ってきたメアリーを見て、たたみかけるように問い質していくロバート。
そこへ来合わせたマイクは、メアリーのことを「Mom(お母さん)」と呼んでしまいます。
なぜ、マイクがメアリーを母と呼ぶのか、家に押し入って自分の写真を見つけたロバート。
そこで見たものは...自分の家族の写真。
彼の傍らには、いつもメアリーが...マイクとアレックス(メアリーの娘)の姿が...
彼らはロバートの妻であり、家族だったのです。
「二人の出会い」は、認知症になって、家族のことも忘れてしまったロバートのために、
家族が仕組んだ「やさしい嘘」だったのでした。
しかし幸せな日々を思い出したロバートには、愛する人たちとの別れが迫っていました...
このやさしいやさしい映画を演出したのは、当時24歳のニック・ファクラー監督。
そして彼がこの映画の脚本を書いたのは、若干17歳の時、彼自身が始めて恋をした時に
ストーリーを思いついたのだそうですから、驚きです。
封切の日、私達が観たのは最終上映だったのですが、観客には若い人は少なく、
私達ぐらいの、おそらく夫婦と思われるカップルが多かったです。
映画の内容が内容ですから、仕方の無いことだと思いますが、私はこの映画は、ぜひ
これから結婚しようとしている人たちに観てほしいと思いました。
それももう結婚が決まっている、或いは結婚を決めている二人にぜひ観てほしい。
医学が発達して、世界的に長寿の社会になり、認知症や様々な病気が問題になって
きています。愛し合って結婚したはずの二人でも、長い年月にはいろいろなことが
起こってくるのは当然で、愛が褪めてしまう夫婦もいるかもしれない。
子が巣立ち、二人になった時には、既に老いがしのび寄ってきています。
どちらかが体の自由が利かない病気になった時、或いは認知症のように忘れてしまう
病気になってしまった時、それでも相手を愛し続けることができるでしょうか?
相手が自分のこと忘れてしまっても、自分は変らずに相手を愛し続けることができる
だろうか...この映画はそれを問いかけているような気がしました。
「この人の介護はできる」...そこまで思って結婚したら、その愛する人の子を虐待する
ような事態には絶対にならないと思います。
臨終まで終わらない介護と違って、日々成長していく子どもの子育てには、ある意味
ゴールがあります。結婚を考えている人に対して、その人の介護まで実感できたら、
たぶんその二人は大丈夫でしょう...そんな気がします。
そして、若くはない私達がこの映画を観て決めたことが、もう一つ。
もしいつか、どちらかが相手のことを忘れてしまうような病気になってしまったとしても、
私たちは二人の過去を忘れてしまったことを嘆くのではなく、そこから新しい関係を築いて
いこう、未来を大切して生きていくことにしよう...そう心に誓いました。
誰にでもいつかは必ず来る「老い」の日々。
それは不安で恐ろしいものでしたが、この映画はその不安や恐怖に対して、「希望」を
示唆してくれたのでした。
恋人と、或いはご夫婦で観に行かれることをお薦めしたい映画です。
by toco-luglio
| 2010-03-30 21:25
| 映画